撞舞

関東甲信越小さな旅】
龍ケ崎市へ、撞舞(つくまい)を見に行ってきました。
舞男(まいおとこ)と呼ばれる人(現在は二人)が、高さ14メートルの柱の上で曲芸師のような演技を披露する伝統行事。
後継者不足などによる中断はあったものの、江戸時代から続いているそうです。

午後6時ごろ、近くの八坂神社でお祓いを受けた舞男たちが入場してきます。
柱が立っているのは、撞舞通りという生活道路。
もちろんこの日は歩行者天国で、沿道にたくさんの人が立ち並んで迎えます。

行列の先頭は、龍ケ崎市の鳶職組合の木遣。
それに続く組合員の皆さんの木遣唄が、祭り気分を盛り上げます。
舞男さんは、緑色の唐草模様の装束に蛙の被り物。

この行事、もともとは雨乞いが大きな狙いだったそうで。
舞男さんの出で立ちは、雨蛙を意識したものなのでしょう。
雨乞いの他に五穀豊穣や無病息災なども、込められていたそうです。

さて諸々の儀式が終わり、いよいよ舞男さんたちが柱を登り始めました。
巻き付けてある縄をつたい、慎重に慎重に登っていきます。
と、思いきや……

途中でいきなり、二人とも逆立ち!
登り始めからバックに囃子が奏でられていたのですが、倒立と同時に演奏も盛り上がり。
囃子手も稽古を重ねてきたようですが、この演出には度肝を抜かれました。

舞男さんたちはいよいよてっぺんに登りつめ(ここでまた逆立ち、大拍手と歓声)、二人で手分けして四方に矢を放ちます。
あの高さで何にも掴まらず立っているというだけで、高所恐怖症の私などは身が竦んでしまう思いです。
その矢を受け留めた人はこの一年幸運に恵まれるということですが、残念ながらこちらには飛んできませんでした。

柱のてっぺんからは、地面に向かって三本の綱が張り巡らされてありました。
矢を放ったあとは、そのうちの一本を使った演技がくり広げられます。
途中まで滑り降りたり、鉄棒のような感じで回転したり。

柱から降りる際にも見せ場を作り、30分ほどの舞は終了しました。
命綱なし、万が一に備えてクッション的なものを下に敷くでもなく。
そんな命懸けの演技を終えて、涼しげな顔でペットボトル入りの水を飲む舞男たちの横顔に熱い視線が集まっていました。