大き子ら

小学校低学年のころかなぁ、うちから自転車で5分ぐらいのところに田んぼがあってさ。
そのわきの小川に、ざりがにがいっぱい棲んでたのさ。
ざりがにの巣の在り処も、俺は把握してて。

学校から帰ってくると、自転車でそこへ行って。
毎日、定点観察をしてた。
捕まえるわけでもなく、ただ眺めてるだけ。

あっ、捕まえてきてバケツで飼ったこともあったけど。
正しい飼い方なんて知らないから、すぐ死んじゃって。
自然の中にいるのが一番って気づいたんじゃないか?子供ごころに。

毎日毎日通ってると、そこの小川が自分のものみたいな感覚になってね。
もちろん、そんなわけはないんだと知らされる事件がやがて起こる。
嵐のように、それはやってきたさ。

いつものようにそこにいると不良の中学生が3人、自転車で通りかかって。
「こんなところで何やってんだ?」と、訊く。
正直に「ざりがにを……」と答えると、彼らは自転車を停めてこっちへやってきた。

そして、俺のモノだと思っていてざりがにと巣に攻撃を始め。
何匹かは殺され、巣は破壊され。
低学年の小学生にとって中学生なんて凄い大人に見えたから、抗議もできず。

じっと耐え忍んで一部始終を目撃、次の日からは行かなくなった。
今朝の散歩でその場所を通り、久々にトラウマが蘇ったよ。
今じゃコンクリートで塗り固められ、ざりがにのざの字も見当たらなかったけど。