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父の戦争体験

亡き父は、昭和二年生まれだった。
一年上の人は兵隊に行き、三年ぐらい下の人は学童疎開
昭和二年生まれというのはその狭間の、徴兵になるかならないかの境目だったらしい。

空襲を体験してる人が多いのも、昭和二年生まれの特徴のようだ。
上の人は戦地、下は疎開先にいた。
だから、空襲体験者は意外と少ない理屈だ。

もっともその頃、父がどこで何をしていたかは殆ど知らない。
当時のことを、全くといっていいくらい語らなかったからである。
空襲自体は体験したようだから(断片的には話してくれた)、思い出したくもない経験だったのだろうと推察する。

語ってくれた数少ない空襲体験は、主に二つだった。
一つ目は「さっきまで隣にいて普通に会話していた人が、次の瞬間死んでいた」。
もう一つは「あまりに激しい恐怖に直面した時、本当に全身の毛が逆立つ」。

それ以外のことは、殆ど黙して語らなかった。
聞き出しておけば良かったという気もするし、心の中に閉じ込めておいたままで良かったのかもとも思う。
そういった、語られぬまま消えていった戦争体験もたくさんあるんだろうな。