禁じられた遊び
李くんというのは友人の友人のそのまた友人ぐらいの人で、韓国から日本へ料理の勉強をしに来ているんだった。一緒に飲んでいて、音楽の話になった。
来日するくらいだから親日家で、母国にいたころから日本の歌が好きだった。ところが彼の青春時代は、法律で日本語禁止。歌に限らず、文学も映画も芝居も、とにかく日本語を使ってもいけないし、日本語のものに触れてもいけない(いまはその法律は廃止されています)。
日本の音楽が好きになってしまった李くん、その罪悪感はちょっとやそっとのことじゃなかった。聴いちゃいけない、聴いたら犯罪者だ、でも好きだから聴かずにはいられない……。
そんな状況下で好きな日本人ミュージシャンの音源を手に入れるには、闇のルートしかなかった。蛇の道は蛇、そういうルートがあったのだ。そして友人どうし、それを交換する。
学校バレしたら即退学だから、慎重の上にも慎重を期した。体育館の裏なんかて実行したという。麻薬の密売みたいに。
さて、そこまでして、いわば命がけで入手して聴いていた日本のミュージシャンって誰だったんだろう。タイマーズ?村八分?頭腦警察?アナーキー?そんな反体制的なバンドを想像していたら、李くん曰く、
……。
今や違う意味でヤバいけど、チャゲアス。