髪もひげも伸びて乱れて

むかし、永六輔のラジオで聞いた話。
ナターシャセブンのバンジョーのひとが歩いて帰宅する途中(京都在住)、町中でアメリカ白人のヒッピーと知り合った。
そして野宿しようとする彼を無理やり家に連れ帰り、泊めてやった。

翌朝、めしを食っているとき。
旅人がリビングに置いてあったバンジョーに気づき、是非とも演奏してくれと要望した。
聴きながら、カントリーの本場の人が感動でボロボロ涙をこぼしたそうである。

ひとしきり泣いたあと、「お前はアメリカで演奏する気はないのか」と訊いた。
「そういう気持ちはあるが、金がないから無理だ」とバンジョー弾きが答えると、旅人は鞄から小切手を取り出した。
「これに、好きなだけの金額を書け」

ボロボロの服にボサボサの髪、伸び放題の髭。
どこからどう見ても浮浪者にしか見えない旅人。
実は1年間のバカンスで世界を旅する、IBMの重役だったのだというお話。