シンバルボーイ

娘が保育園に通っていたときの、園の音楽発表会。

あるクラスの合奏でシンバル担当だった男児。各コーラスの最後にジャーンと鳴らすだけ、3コーラスの曲だったから出番は計3回しかなかったんだけど。たぶん音楽的才能に著しく欠ける子だったんだろう、どのタイミングで叩けばいいのか自分では全く把握できぬ様相。

指揮をしていたのが担任の先生で、我々客席の側に背を向けているので顔は見えないのだけど「先生が〇〇くんの方を見たら叩くのよ」的約束事があったものと思われ、彼は演奏が始まる前から先生の顔を一点凝視。その見つめる様、世にも稀なる真剣さ。

悲しいかな努力の甲斐なく、緊張のせいもあったんだろう、叩くタイミングは完全にズレてしまって音楽的には大失敗だったのだけれど、彼の全身全霊な姿は我が心をしかととらえ。30年近くたった今でも、ありありと思い浮かぶのである。