訛り

いま読んでるのは、長塚節の「土」。
この歳にして、初めて紐解いた。
学校の授業で習って、タイトルだけは知ってたけど。

ふるさとゆかりの作家でもあるし、いろんなところで目にしてもいた。
でも、読んだことはなかった。
知ってるけど読んでないシリーズ、樋口一葉とかドフトエフスキーとか。

さて、「土」だが。
暗いか明るいかと問われれば、暗い小説です。
明治のころの農村の、貧農の家が舞台ですから。

はしがき(この小説のファンだった夏目漱石が書いている!)を読んでいるときは、イヤな予感がしていた。
読むのに辛抱が必要、とあったから。
けど、自分にはむいてたようで。

冒頭から、すんなり入れた。
こういう世界、嫌いじゃない。
あと、茨城県人であるのも幸いだったかも。

舞台が身近で、知ってる地名が出てくる。
土浦とか霞ヶ浦とか、鬼怒川とか。
さらに、もっと大きいのが。

登場人物の会話が、オール茨城弁。
それも、ネイティヴな。
とってつけたように、語尾を『だっぺ』で終わらすヤツじゃなく。

むかし何かで知った「農村社会は男女同権だった」論。
男女とも同じ言葉遣いをするのが、その証拠である。
この小説の登場人物たちの話言葉も、男女まったく同じ。

「〇〇は、こう言った」などの説明の文がなければ、誰のセリフかわからない。
そういえば、うちのばあちゃんも身の回りのばあちゃんも自分のこと「オラ」って称してた。
女だから女らしい言葉遣いをするって発想は、なかったんだ。

野良に出れば、男も女も同じに働く。
だから男女平等、性差別なし。
夫婦どちらかが欠ければ即、仕事が立ちいかなくなってしまう。

男女が違う言葉遣いになったのは、武家社会からだそうで。
男は外で働き、女が留守を守る。
別々に働くようになって、男女の区別が生まれた。

そんなことも、「土」を読みながら思い出した。
男も女も、貧しさに喘ぎつつ必死に「土」を踏みしめて戦っている。
以上、読み始めたばかりの序盤戦での感想でした。